男性器と母胎をつなぐナーガ(蛇神)。~リンガとバライの象徴性~

「・・・・都(ヂャムパーサック)の近くには、リンガパルヴァ山がある。その頂上には祠があって、いつも5000人の兵がこれを守る・・・」

(7世紀、中国:唐で成立した『隋書』より)




写真で、ヒョコッと突出した山が、『隋書』に記載されるリンガパルヴァ山。

聖なるリンガのお山だ。



リンガとは、男性器の象徴。

そういわれてみれば、突出した山はその形に見えてくる。



7世紀の中国・唐の歴史書は、そこに5000人の兵が警備していたことを伝えているわけだ。

まぁ、人数の真偽は別として、それほどまでにリンガのバルヴァ山は、太古の昔から神聖視されていたのである。




そんなリンガパルヴァ山の山麓にあるワット・プー。

ゲートを抜けて心地いい空間を過ごしたあと、灼熱の太陽の下、遺跡へ向かう。

まず目の前に広がるのは、池である。




聖なる池、”バライ”。

バライは、巨大貯水池で、かつてのクメールの肥沃な空間作りには欠かせないものだった。

というのも、アンコール地方は、雨季にはほとんどの土地が冠水するくせに、乾季になるとカラカラに乾くという、なんともやっかいで厳しい自然環境下にある。

だから、バライのような貯水池を作ることで、水の確保と洪水の防止、二つの効果が期待されたわけだ。

太古の人々の生命に直接かかわる、重大な池なのである。



また、バライは”大海”を表現している。

大海は、ヒンドゥー神話『乳海攪拌(にゅうかいかくはん)』のワンシーンに登場する。

ヴィシュヌ神が「アムリタ(甘露)」という不死の薬を得るため、神々や阿修羅に命じ、ナーガ(蛇神)を綱代わりに綱引きをさせて、大海を攪拌させる。

すると、大海は乳海に変わり、アムリタが生じたというシーンである。



このアムリタとは、不死の薬であるが、収穫物を表現している。

つまり大海は、地上に収穫物を生み出す源の象徴的存在であり、”母胎”ともいえよう。

バライについて、ある碑文は、「大乳海のごとく喜びをもたらす池」で「その腕(分流)によって乳海自ら邪魔な水を取り除き、甘露(収穫物)の湖に変える」などと説明しているが、それも納得である。(石澤良昭『アンコール・王たちの物語』


生産面だけではなく、信仰や世界観の面にも、バライは深く食い込んでいるのだ。




男性器を象徴するリンガのお山。

母胎を象徴するバライのお池。

二つをつないで結実させるために、蛇神・ナーガは両者の間に今もひっそりと、立っている。






タイに行きたきゃ  にほんブログ村 海外生活ブログ タイ情報へ 
タイに住みたきゃ  タイ・ブログランキング   ポチリとクリックお願いします!


<参考>

2 件のコメント:

  1. 匿名です。バンコク到着、まだ数時間。ヤワラーを散策してたら、両手に30枚ほどのDVD,CDが。悲しいくらい重いです。はは。

    返信削除
  2. それは、いい重さですよ。笑。
    ヤワラーですか・・・久しく行ってないので、そろそろ散策に出かけたいところです。

    返信削除