風になって来てくれた


突然に逝ってしまった教え子の葬式。

彼のお母さんは、気丈にふるまっていた。

しかし、彼の日本語学科のポロシャツを肌身離さず持っていたのが、とても悲しかった。


「来てくれて、本当にありがとうございます。息子も本当に喜ぶと思います」

そう言われて、僕も涙がこぼれた。


お寺の周りの草むらあたりを見ていると、あいつがいつものようにタバコを吸ってて、僕に気づくと大きく手を振ってくるような、そんな気がした。

目をこらして、周りを探した。


式のあと、ニウェート先生といつものように、先生の部屋のベランダで酒を飲んだ。

いろいろと話すなかで、逝ってしまった彼の話になった。

「ヤオ、聞いてるか」

ニウェート先生はそう、空に向かって問いかけた。

すると、スーと心地いい風が吹いてきた。


僕らは、完全に一緒に飲んでるな、という思いになり彼に語りかけた。

「ここに来てるんだな。お前は酒が好きだもんな。お前のこと、俺たちは忘れないぞ。お前は、ずっと俺の教え子だぞ」

そういった途端、雲一つない空から、霧雨が降り始めた。

彼はきっと僕たちの言葉を聞いているにちがいない。

一緒に飲んでいるにちがいない。

そう思いながら僕たちは酒を飲んだ。


一緒に飲みに来てくれて、そして何より、これまでいろいろと本当にありがとう。

お前のことは、ずっと忘れない。





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